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どのように処理するのかということが問題となる。商取引の実態についてみると、「不可抗力」に該当する事態が発生した場合には、契約履行義務は、通常、免責されることになると考えられるが、EDI協定の締結に際しては、「不可抗力」と認められる事態の範囲並びに「不可抗力」に該当する事態が発生した場合に、当事者に与えられる免責の内容について、当事者間において、あらかじめ、取り決めておく必要がある。
このようなことから、本条においては、「不可抗力」に該当する事態を、『当事者の支配力の及ばない事態』であると制限したうえで、「不可抗力」に起因し、『(a)かかる事態が本「協定書」に署名した時には予知できなかったと合理的にみなされるものである場合、または(b)かかる事態の発生による影響を回避もしくは克服できなかった場合には』、当事者は、『本「協定書」に定める債務の履行遅滞あるいは不履行・・・の責を負わないものとする。』旨を明確にしている。
2.不可抗力条項
(1)不可抗力条項の性質
いずれの当事者も約束したことを履行する義務を有する。しかし、時には物理的にも法律的にも、約束を履行することが不可能になることがある。例えば、売買の目的物を製造することができた唯一の工場が地震により破壊されたため、納期に履行することが物理的に不能となったり、あるいは、契約締結後に法律の改正または制定により、売買の目的物が輸出禁止対象品目に該当することとなったため、その契約の履行が法律上不能となることがある。
このような事態は、履行不能(impossibility)、不可抗力(act of God)、目的達成不能(frustration ; failure of presupposed conditions) または“force majeure"(不可抗力)に属する問題である。不可抗力条項は、厳密にいうと、「免責」条項(“exemption" clause または“relief from liability" clause)とした方が、この条項設置の趣旨を一番よく言い表すことができると考えるが、実務上、フランス語の“force majeure"という文言が一般に非仏語圈の国でも用いられている。

 

 

 

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